【源泉所得税の納付が遅れる場合】と【海外売上の入金元の名前が様々な場合】と【前職から源泉徴収票を貰えない】と【2年分の扶養控除申告書】

年末調整の時には所得税の納付があったり還付があったりで、かなり税金の納付が複雑になりますね。

少しでも従業員の税金の計算を間違えたりすると、自動的に会社全体の納付額まで変わってしまうような場合も多く、その場合には、結果として、悪意がなくても、源泉所得税の支払いが遅れる場合が出てきます。もちろん、その逆も出ますね。

 

<税金納付が早すぎた・多すぎた場合>

この場合は何の問題もないです。次に払うときに超過額を控除してフィニッシュです。先に払ったからといって利息を貰えるようなものではありませんが、税務署はこの点について何も指摘しません。

 

<税金納付が遅かった場合・少なかった場合>

厄介なのはこっちです。自分で気づいて追加で払った場合でも延滞税は原則としてかかります。

(1) 納期限から2ヶ月経ってないケース
原則として年「7.3%」
年利息「7.3%」と「特例基準割合+1%」のいずれか低い割合となります。金額は年によって違いますが、おおよそ年利で5%ぐらいと考えておけばいいでしょう。

(2) 納期限から2ヶ月以上経った場合
年利「14.6%」で計算されるのが原則です。ただし、「特例基準割合+7.3%」が年利14.6%より低い場合には、そちらで計算されます。ざっくり、10%程度のイメージでしょうか。

じゃあ、これを逃げ切る方法はないのかと、聞かれます。なかなか微妙ですが、よくやっているのは納付書の書き方です。本来はその年の1月に収めるべき税金ですが、納付書にはたとえば6月と書いて逃れようとする人もいます。もちろん、違法行為です。

忘れてはいけないこと。

納付が遅れた場合には延滞税だけでなく不納付加算税も課せられます。

自分で気づいて居収めた場合は5%。税務署の指摘に従った場合は10%です。ただしこの加算税が5000円以下であれば切り捨てられます。つまり納付不要です。

皆さん、延滞税だけと思いきや、不納付加算税まで課せられたとなれば思った以上の追徴を食らうことがあります。遅れてしまうのはミスもあるので仕方ないと思いますが、そのリカバリーは極力早いほうがいいということでしょう。

 

 

海外売上が色んな人の名前で入金されてくる場合

昨今、中小企業であっても海外取引が増え、海外送金事例も前年比の倍増以上で増えています。越境EC等の発展もその背景にあるでしょう。そして今後もその金額は圧倒的に増えていきます。

さて、その過程でいくつかのイレギュラー事例が発生します。今回は自社で海外販売した商品が見知らぬ人の名前で入金されるケースです。

とくにこの事例は中国やベトナムといった、若干民主主義ルールが薄い国で、海外送金規制があるような場合に多い事例です。

★ex

1億円の商品を中国企業に販売。本来ならばその企業から海外入金という形で1億円入金されるべきだが、相手先に都合で日本国内に住む50人の中国人名義口座(日本国内口座)から200万円ずつ入金があった。

→これはおそらく中国側の送金規制によるものです。中国側で正式な輸入ルートをとれば1億円の一括海外送金ができるでしょうが、おそらく何らかの理由でできない状態になっていると思われます。

しかしこの事情は、日本企業からみれば関係ありません。誰からの入金であろうとそれはこっち側で操作できる話ではないからです。

なので、税務署側もこの事情について細かく指摘はしないと考えられます。

インボイス・輸出申告書の売上が1億円で、(誰からの入金であろうと)1億円の入金があれば、それ以上の突っ込み所はありません。

 

ただ、過去の事例として、

この50人の銀行口座のいずれかが不正送金に関与しているようなケースだと警察からの聴取の可能性があります。要は、不正送金に関与したと疑われるリスクです。完全なとばっちりですが、過去に事例としてはありました。

これを説明するのは一苦労です。誰から入金されるかわからないといった商売って通常はありえないので。勿論、日本サイドとしては真っ当な商売をしているだけです。

今までは、説明することで疑念は晴れましたが、時間と労力がかかりました。また、口座残高分の金額の移動がその間制限されるのでビジネス的にもしんどくなります。相手先との契約等の中で、どの口座から入金されるといった文書を入手しておくのがベターかと思います。

 

 

前職から源泉徴収票を貰えない場合

前職の職場から、源泉徴収票を貰えないという相談をよく受けます。

源泉徴収票発行義務は会社にあります。

なので、もらえないということはその会社が悪いということになるんですね。ただ、破産したような会社、ろくに決算作業もしてないような会社、管理体制がボロボロの会社等においては会社としての年末調整作業を行っていないようなケースもあります。

これは会社としては完全に義務違反です。

しかし、勤務してた身としては、この場合にどうすればいいのでしょうか?

何度お願いしても出てこない場合には、自身の所得税や住民税や国民健康保険を定めるための申告作業ができません。これは本人さんにとっては大問題なんです。

こういう場合は、源泉徴収票不交付の申請を税務署に行います。

要は、私は努力したけど源泉徴収票を発行してもらえませんでした。なので、給与明細で何とか申告させてください、という意味合いのものです。

おそらく、こうなると、相手方の会社にも税務署から何らかの調査が入ります。源泉徴収票も出せないような管理体制のずさんな会社なのですから。

 

なので、会社側にお願いするときも【税務署に申し立てますよ。だから早く出してください】という方が、効果的な場合があります。

いずれにしても、ご本人さんのアクションが必要になります。

面倒ですが、納税は国民の義務でもあります。しっかり覚えておきましょうね。

 

 

2年分の扶養控除申告書!?

年末調整花盛りのこの時期、中途退社の人から2年分の扶養控除申告書を求められたけど、意味があるのか?と聞かれることがあります。

ほとんど同じことを書くのに・・・・といった質問です。

結論からいくと、法的には【2年分の扶養控除申告書を求められるというのは】間違ってません。

 

たとえば、27年度の年末調整において、扶養控除申告書は28年度分になってますね。これは、28年12月の年末調整で使うものですが、28年1月からの給与計算において反映させるために、先にもらっておくものです。つまり、27年度の年末調整においては27年分の扶養控除申告書があればokなのです。事前に、前もって、もらっておこうという会社のスタイルですね。

 

ところが、27年度の途中で中途入社したような人は、年末調整においては、28年分の扶養控除申告書はみんなと一緒に書きますよね。でも27年分の扶養控除申告書は前年の年末調整を受けてないので、存在していません。そこで、27年分と28年分の扶養控除申告書を会社は求めてくるわけですね。

 

大企業等の管理体制のしっかりしたようなケースだと、入社時にまず扶養控除申告書を書いてもらっています。これを行っていれば、2年分を一気に書く必要性はないわけです。

そう考えると、扶養控除申告書ひとつとっても色々と意味があるんですね。