銀行借入の際に個人の資産負債状況までチェックされるか?
個人的には気軽に融資を求めるのは好きではありませんが、事業形態によっては、どうしても融資が必要な場合ってありますよね。
例えば、卸売や小売の場合には、規模拡大を求めるのであれば資金繰りのタイミングによって致し方なく運転資金が必要になる場合はよくある話です。
また開業時や法人設立時には設備投資や店舗内装や必要物購入で資金が一時的に必要になります。もっとも、創業時に関しては融資の選択肢の幅はそれほど広くありません。ゼロベースでスタートする場合は特にです。貸し手から考えると当然かもしれません。これからどうなるともわからない場合にキャッシュを貸す行為は慎重になるものです。信金や都銀や地銀からのプロパー融資はまず無理なので一般的には日本政策金融公庫に依頼をかけます。政策金融公庫は将来性よりも資金力を見ますので自己資金が多かったり保証人をつけれたり担保財産があれば有利になります。また税理士事務所や公認会計士事務所から政策金融公庫を紹介してもらうことで有利に働く場合もあります。この政策金融公庫で思ったような借り入れができなかった場合は、各都道府県の保証協会経由での借入れが一般的です。事業規模が小さい場合にはその窓口として信用金庫を使うケースが多いですね。
では、「会社で銀行借入をしたいけれど、個人で借金がある場合にマイナス要素になるか」という問いがあります。非常によく受ける問い合わせです。
まず、金融機関には形式基準があります。
例えば、住宅ローンの場合だと、年収と年間ローン返済額を比較して、年収の1/3程度に収まっているかどうかがチェックされたりします。
同じように、社長の個人的借金が会社での融資にとっても不利になるかどうかですが、これはケースバイケースとはいえ、プラスに働くことはないと思います。
大手銀行担当者がよく言うことですが、最近は個人情報保護の観点から債務者情報が他の銀行に流れるというのはかなりレアになってきています。
つまり、社長個人が●●信用金庫やア●ムから借金をしていても、会社のメインバンクである三●●友銀行が知っているかというと実に微妙です。
住宅ローン等であれば個人所有の住宅の見合いなので容易に想像されますが、不動産等の形のあるものでなければ見合いの個人的借金を見つけることは銀行にとってもかなり難しいからです。
●日本政策金融公庫の事例
社長が個人再生を行っており長期に渡る返済を政策金融公庫に伝えたところ、法人の運転資金の融資を断られた事例がありました。金融機関側の表現としては「社長が個人再生を受けているから絶対にダメというわけではなく、本業の実績と計画を見て判断したとのこと。。真偽は分かりませんが、マイナス要素であったことは推測できます。
●保証協会の事例
社長個人の土地や預金については確認されます。会社の経営状況が悪くなった時のための個人資産があれば補填できると考えるので当然ですね。また当たり前のように社長個人の債務保証を求めてくるケースも多いです。となれば社長の資産や借入の状況を気にしなくてもいい状況を作るしかありません。事業計画、過去の実績についての論理的な説明、抜群の返済計画、納得力の高い将来性等が高い基準で揃えれば、保証協会で厳しい場合でも都銀は揺れると思います。
なぜなら、保証協会や信用金庫が過去の実績や資産状況を重要視するのに対して、都銀系は将来性を重視するからです。
本当に自信のあるビジネスであれば、社長個人の借金なんて気にせず、都銀に当たるのも一手だと思います。
法人が決算時に提出すべき書類
法人が毎期の決算時期に提出する書類について羅列してみます。
それぞれ決算後2カ月以内に提出するのが原則になります。原本を提出すると返却されないので、基本的には控と返信封筒を入れておけば返送してくれる。
●法人税の申告書を所轄の税務署に提出する。
別表+決算報告書(貸借対照表・損益計算書・販売費及び一般管理費明細・株主資本変動計算書・注記表)+内訳明細+法人事業概況説明書+適用額明細書+税務代理権限証書あたりがメインとなる。法人印は「別表一」、「復興特別法人税の申告書」「税務代理権限証書」に必要となる(ETAXではない場合の話)
●消費税の申告書を所轄の税務署に提出する。
原則課税の場合には、消費税計算プロセスの表も提出する(Excel等で作ったオリジナルでもOK)。
●都道府県民税・市町村民税・事業税の申告書
「都道府県民税・事業税の申告書」を都道府県に、「市区町村民税の申告書」を市区町村に提出する。事業税に関しては赤字の場合はゼロになる。
<決算時注意点>
ビジネスモデルをまずは掴むこと。 |
預金残高と通帳が一致していることを確認する。 |
売掛金残高の確認。クライアントにはこれでOKかどうかの確認をする。相手先と相手先住所が不明であれば聞く。 |
在庫残高の確認。クライアントにはこれでOKかどうかの確認をする。 |
前払費用残高の確認。クライアントにはこれでOKかどうかの確認をする。支払家賃等がメインになるが漏れがないように注意する。 |
貸付金残高の有無及び正当性を調べる。貸付金残高を計上する場合には受取利息の計上も確認すること。 |
固定資産関連の減価償却は魔法陣減価償却ソフトを使用して計算する。 |
固定資産関連の内装代、機械装置、車両等の当期増加分については取得価格の検討を行う。契約書関連も全て入手する。 |
固定資産の増加の中には消耗品で落とせるものが入っていないかを確認する(白色の場合は10万円以下、青色の場合は30万円以下)。 |
固定資産関連の賃借物件の保証金・敷金の違いに留意(返還の有無に留意)。 |
買掛金残高の確認。クライアントにはこれでOKかどうかの確認をする。相手先と相手先住所が不明であれば聞く。 |
未払費用残高の確認。クライアントにはこれでOKかどうかの確認をする。給与手当、水道光熱費、通信費等がメインになるが漏れがないように注意する。 |
預り金残高の確認。源泉所得税がメインになるが残高の消し込みに注意を払う。必要であれば納付書コピーを貰う。 |
借入金については償還明細書の残高と突号する。新規借入の場合は償還明細書を入手する。 |
クレジットカード売上がある場合、カード手数料は消費税上非課税になるので(原則課税)、純額ではなく総額売上にすることを注意する。 |
役員報酬額は毎月同額になっているかどうかを確認する。 |
給与手当で毎月源泉所得税を控除しているかどうかを確認する(甲欄、乙欄のいずれかかも確認) |
外注費や支払報酬料の計上額のうち、源泉所得税を控除しなければならないものが入っているかどうかを確認する。 |
新規地代家賃関連については全て契約書を入手する。その上で地代家賃額の正当性を検討する。貸主及び貸主の住所も確認する。 |
社宅がある場合には、家賃のうちの一部(一般的には半分以上)を給与から天引きしていることを確認する。 |
消耗品費については10万円以上のものはあらかじめピックアップする。 |
会議費については会議費明細をちゃんと作っているかどうかを確認する。 |
法人の場合、受取利息勘定の中身を源泉所得税と利子割に振っているかを確認する。 |
租税公課の中身について検討する。租税公課勘定以外に振り替えるべきものは振り替える。 |
雑費勘定は極力なくすようにする。 |
雑収入勘定に前期の租税公課で計上した源泉所得税と利子割が同額で計上されているかどうかを確認する。 |
消費税課税業者については原則・簡易の適用を検討する(前々期決算書が必要)。 |
上記の作業が一通り終われば、残高試算表からB/S、P/Lの各科目をレビューする。違和感のある内容があれば書き出して質問等を行う。聞いても分からそうなものは証憑(契約書等)コピーを貰う。 |
税務署・都道府県・市町村の3箇所から決算書類がクライアント宛に届くので、それらを弊社に郵送してくれるように頼む。 |
会社設立後によくある質問
私たちのメイン業務は会計監査人的なお仕事ですが、それでも毎月数社の会社設立業務にも携わっています。
会社設立の手続はまったくもって難しくありません。
厄介というか我々公認会計士が質問を受けるのはやはりその後の会計処理についてですね。特に設立直後はその前の準備期間と相まってかなりのお金を使うことが多いです。お金を使うことが多いということは会社にとっては取引が多いということ。もっというと会計処理が多いということになります。
本当に色んな質問を受けるのですが、その中でもどんな業種の方も通るであろう汎用性の高い質問を2つ書いてみます。
①固定資産の会計処理
まず一つ目ですが、設立時には店を作ったり事務所を借りたりするのでお金がかかることが多いですね。その場合にはやはり、お金を借りたりするわけですが、大きなお金が動くと、会計処理が複雑になったりします。その中でよくあるのが、
事務所や店舗を借りて内装をしたら150万円かかりました。これはどうやって処理するんですか?
ということです。
内装工事と一言でいっても、電気工事・排水工事・クロス工事等多岐にわたります。でも小企業の会社さんが頼む小企業の内装屋さんはこういった工事を明細書で分けたきっちりした見積書を作ってくるとは限りません。
こういった場合は、とりあえず、支払った分を区別できないので
(借方) 付属設備150万円 / (貸方)現金150万円 という仕訳を行い、耐用年数を18年と設定します。
これで毎期の決算で減価償却を行って、費用化していくことになります。
②創立費
会社設立には結構なお金がかかります。株式会社だと20万円以上のキャッシュは必要になります。これに加えて会社の印鑑を作ったり、制服を作ったり、色々と設立関連でのお金がかかります。
会計処理としてはこれらは創立費勘定になります。しかし、お金の出所は設立した個人である場合がほとんどですね。
となると、この個人の人は会社にお金を貸しているということになります。
その貸したお金はどうやって返してもらえるのか、その貸したお金はどうやって会計処理するのか、これをよく聞かれます。
この場合は
(借方)創立費 30万円 / (貸方)短期借入金30万円
というような処理をします。
この短期借入金は個人が会社にお金を貸している、つまり、会社が個人からお金を借りているということと同義です。
いつでも個人は会社から30万円を引き出せるといういことですね。
税務署職員と公認会計士。目指すならどっち?
最近立て続けに女子大学生から同じような質問を受けました。
【公務員か公認会計士のどちらかを目指したいんだけれど、どっちが自分の適性にあっていると思いますか?】というもの。
正直かなり質問の内容にびっくりしました。
確かに、学生の方から見れば税務署と公認会計士は会計税務を扱う業務ということでかなり類似の業種と思われているのかもしれません。しかしですね、確かに扱ってる業務は近いかもしれませんが、仕事として考えると全く異質なものです。
私の仕事は公認会計士のメイン業務【独占業務】である監査を行いつつも、税理士登録を行い税理士としての業務もやっています。公認会計士ではありますが、税理士として仕事をすることで、税務署員と接する機会も必然的に多くなります。つまり、私はこの2つの職業を結構深いところでリアルに知っているということになります。
では何が違うのでしょうか。
根本的に違うのは公務員か民間かということです。
税務署員について・・・・・
税務署員はまずもって給料をもらえないことはありません。しかしその分世間の目は厳しく、利害関係者との飲食なども倫理法か何だかで規制されています。抜群の安定感はあるけれどもちょっと窮屈な人生になるかもしれません。そして、仕事の究極の目的は公務員ですから当然【お国のために】働くのです。税務署員であれば【構成な税負担を国民に広く行う】ことなので、一納税者の我侭やお願いに付き合っている仕事ではありません。ある意味で、情を捨てて仕事を行うことも多く出てくるでしょう。仕事のハードさでいくと、公認会計士との比較になりますが、おそらくかなり仕事時間は短いと思われます。もちろん公認会計士といっても様々ですので一概には言えませんが、監査業務に携わっている公認会計士は、公益法人や会社法や幼稚園や学校法人監査ならともかく、上場企業監査の場合であれば、決算時期は鬼のような忙しさです。1ヶ月全く休みなしというのもザラです。これに比べると公務員である税務署員はまだ楽ではないかと思うのです。
では公認会計士側から考えてみましょう。
公認会計士は社会的ステータスが高く、税理士よりも格上で、報酬も莫大である・・・・・と思っていると大変失敗します。そもそも今は公認会計士は過多です。多すぎます。ということは、みんなにそれなりの報酬が当たるような業務はないということです。監査法人に就職しても数年たって仕事が出来ないと判断されるとあっさりリストラ対象になります。じゃあ、独立してやれということで独立したとしても、税理士と公認会計士を巻き込んだ激烈な競争の中に身をおくことになり、その中で顧客を獲得して収入を得るようになるには抜群の営業力等の際立った能力が求められます。実際にかっこつけて独立したものの挫折した公認会計士を多くみてきました。というよりも成功する確率の方が圧倒的に低いのです。そうです、公認会計士は成すればある程度の収入は見込めますが、その成功する確率はかなり下がってきており、人並みの生活をするのにも苦労している公認会計士がいっぱいいるのです。その点、税務署員は安定しています。仕事ができなくても給料は保証されてますから。
ただ、公認会計士にしろ税理士にしろ、仕事はあくまで民間です。お客さんを満足させて、お客さんと喜び苦しみ一緒になって頑張って、報酬をもらう仕事です。公務員にはない仕事の喜びはココにあります。
単純に比較するのが難しい二つの職業ですが、全く異質なものだということをわかってもらえたらと思います。
その上で自分の適性や希望がどっちに向いているのか、それも考える必要があります。
ちなみに、公認会計士試験の合格もそんなに簡単なのものではありません。
だからこそ、【気持ち】が大事なんだと思います。
確定申告で控除の入力が漏れた場合はどうすればいいのか
確定申告の際によく受ける質問があります。それは控除を忘れて後で気づいて損してる、どうしよう、というものです。
確かに確定申告での控除は扶養控除、寡婦控除、社会保険料控除、生命保険料控除、小規模企業共済、医療費控除、住宅ローン控除など、多岐にわたります。
どれかひとつが漏れていてもおかしくないかもしれませんね。
そういう場合には結果として納税者が損していることになります。
ミスしたほうが悪いから救済なし、とはなりません。
5年の間の中では、更正の請求という手続ができる場合があります。以前は1年だけでしたが平成23年に改正が入りました。
手続は簡単です。税務署長<そんなに偉くないですが・・・>に対して更正の請求書を郵便で送って、後は税務署の判断待ちになります。まあ、普通に考えると、単なるミスであれば、すぐに還付がなされるはずです。
ちなみに、遅れれば遅れるほど還付されるお金は大きくなります。
還付加算金といわれる一種の利子が発生するため、その期間が長くなればなるほど、加算金も大きくなります。
還付金の額が大きい場合には、意図的に<5年という期間を有効利用して>申告を遅らせる兵もいるようですが、、、、専門家の立場からはお勧めできません。
逆に、納付額が小さい場合は、、、、
たとえば、奥さんがパートで働いていて年間103万円以上の収入を得ているのに配偶者控除をしてしまったようなケースですね。
この場合は、上記の手続きとは逆で【修正申告】を行います。
やっかいなのはこの場合には還付加算金の逆の発想でいろんな加算がされる可能性があります。
延滞税のみならず、過少申告加算税、悪質な場合には重加算税がかかったりもします。
更正の請求でも修正申告でも手間はかかりません。できれば一発勝負で出して終わりたいですね。